学会誌 第93巻第5号 食料供給の安定化と環境保全に資する農業生産基盤の新たな展開(2025年5月発行)

◆小特集の趣旨
 わが国の農業は,食料供給の安定化や環境保全において重要な役割を果たしています。しかし,気候変動や
世界人口の増加に伴う食料需給の不安定化により,輸入依存に対するリスクが高まっています。他方,国内で
は主食用米の需要の減少傾向が続いており,麦・大豆や野菜など需要のある作物への転換が求められています。
こうした背景の中,「食料・農業・農村基本法」が改正され,気候変動などによる災害の防止や軽減を図るこ
とによって生産への悪影響を抑えることや,環境との調和および先端的な技術を活用した生産方式との適合に
配慮しつつ,農業生産基盤の整備や保全のための施策を講じることが新たに位置づけられました。さらに,水
田整備では汎用化に加えて畑地化が明記されました。
 農業従事者の減少が進む中で,食料生産を増やし,同時に環境保全を実現するためには,抜本的な技術革新
とともに,新たな時代に即した農業生産基盤のリデザインが必要です。水田の畑地化や,社会実装されている
使用者の監視下(目視)で無人の自律走行が可能なロボット農機の性能を発揮できる農地の整備など,これら
の取組みを推進・発展させていくために,農業生産基盤の新たなあり方を議論することは重要と考えます。
 本小特集では,食料供給の安定化や環境保全を両立させる持続可能的な新たな農業生産基盤の構築に向けた
報文をお届けします。

◆展 望 「これからの農地整備」
    農林水産省農村振興局整備部農地資源課 登り俊也

◆小特集報文
大区画圃場を最大限に活用する高能率低投入型水田輪作体系」
    農研機構東北農業研究センター 冠 秀昭・篠遠善哉・幸田和也・屋比久貴之
    農研機構本部 古畑昌巳

気候変動を踏まえた将来の降雨予測に基づく排水計画策定手法」
    農林水産省農村振興局整備部 中西滋樹・空 周一・湯浅和広・田澤加奈子

農業者による施工が可能で簡易な地下排水・灌漑システム」
    新潟県糸魚川地域振興局農林振興部 佐藤太郎
    宮城大学事業構想学群 千葉克己
    東京大学大学院農学生命科学研究科 吉田修一郎
    明治大学農学部 登尾浩助

水田畦畔へのラジコン式草刈機の導入条件の検討」
    農研機構農村工学研究部門 松本宜大・若杉晃介
    三陽機器(株) 堤 俊雄・張本超群
    農研機構農村工学研究部門 鈴木 翔