◆小特集の趣旨
農業農村工学は,農業の生産性向上と農村の生活環境の整備,農業農村に関わる中小都市も含めた地域全体
の持続的発展を図るため,循環を基調とした社会を構築し,水・土などの地域資源を,人と自然の調和,環境
への配慮を重視して合理的に管理する科学技術であり,人が生きていく上でかかせない学問といえます。
しかし,多くの大学で農業農村工学関連の学科や研究室への志望者の減少が問題となっています。これには
さまざまな要因はあるものの,農業農村工学が,高校までに関わらないなじみのない分野であることも大きな
要因だと考えられます。そこで改めて,農業農村工学を担っている関係者が高校生や大学 1・2 年生などの若
手に向けて,農業農村工学を紹介し,その魅力を発信する必要があると考えます。
たとえば,大学のこれまでの取組みとしては,地元の中学・高校へ「出前講義」やオープンキャンパスを利
用して,農業農村工学の魅力を伝えることが挙げられると思います。また,行政や関連団体の取組みとしては,
「水の日」に農林水産省関連が農業・農村の持つ多面的機能を紹介するイベントや,「田んぼのいきもの調査」
(2001~2009 年),多面的機能支払交付金に基づく全国3,477 団体(2017 年度)による農地での生物調査など
が挙げられます。さらに,内閣府・文部科学省・日本経済団体連合会が共催する,女子中高生等に理系の職場
などを紹介する「理工チャレンジ(リコチャレ)」が行われ,多くの関連企業が農業農村工学の体験イベント
を開催しています。
このように,農業農村工学関連の企業,大学・研究機関,行政,組織それぞれで,中高生向け,子ども向け,
一般の方向けのさまざまな取組みをこれまでに行ってきたことと思います。
本小特集では,農業農村工学の魅力を発信するための取組みについて,過去の事例,現在新たに工夫して取
り組んでいる事例,また,これらの課題,将来的な構想などを紹介いたします。
◆展 望
「江戸からの伝言―農業農村工学,昔からある魅力―」
(公社)農業農村工学会理事,全国水土里ネット土地改良広報センター所長 牧 千瑞
◆小特集報文
「学習マンガをきっかけとした農業農村工学の魅力発信の展開」
農林水産省農村振興局整備部農地資源課 花田潤也
農林水産省農村振興局整備部設計課 保志直弥
(株)NHKエデュケーショナル 小杉早苗
「新潟日報・水利ゼミによる農業農村工学の役割と魅力の発信」
元 北陸農政局信濃川水系土地改良調査管理事務所 高橋良次
新潟大学自然科学系 鈴木哲也
関東農政局利根川水系土地改良調査管理事務所 小峰 昇
元 北陸農政局信濃川水系土地改良調査管理事務所 福田一宏
「農業環境工学分野の人材確保に向けた帯広畜産大学の取組み」
帯広畜産大学 宗岡寿美・宮竹史仁・木村賢人・吉川琢也・中島直久・藤本 与
「関西国際大学の筆者による農業農村工学の魅力発信」
関西国際大学経営学部 北村浩二