学会長からのご挨拶

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公益社団法人 農業農村工学会 第27期会長  平松 和昭 (Hiramatsu Kazuaki)

 令和2(2020)年5月25日開催の農業農村工学会第260回理事会において,第27期会長に選任されました。 会員各位・諸団体のご支援,副会長を始めとする理事,ならびに学会事務局各位のご協力を得て,その職務に当たる所存であります。
 農業農村工学とは 「農業の生産性向上と農村の生活環境の整備,農業農村にかかわる中小都市も含めた地域全体の持続的発展を図るため,循環を基調とした社会を構築し,水・土などの地域資源を,人と自然の調和,環境への配慮を重視して合理的に管理する科学技術」 と定義されています。 その科学技術を担う農業農村工学会は,昭和4(1929)年に 「農業土木学会」 として創立されて以来,農業生産基盤と農村生活環境に関する研究者や技術者の活動の場となってきました。 平成19(2007)年には,対象や手法の拡がりと多様化に合わせて,名称を現在の 「農業農村工学会」 に変更しました。 平成24(2012)年には,社団法人から公益社団法人に組織形態を変更し,「農業農村工学の進歩及び農業農村工学に関わる研究者・技術者の資質向上を図り、学術・技術の振興と社会の発展に寄与する」 ことを目標に様々な活動を展開しています。
 その中で,わが国の農業と農村は,これまでにない事態を迎えようとしています。 人口減少,農林水産業従事者の減少と高齢化,土地持ち非農家の不在村地主化,農地の減少と荒廃化,農業水利施設の老朽化と管理体制の脆弱化,頻発化・激甚化する自然災害,鳥獣被害など,深刻な課題が山積しています。 その一方で,グローバリゼーションの進行,大規模農家の台頭,担い手への農地の利用集積,6次産業化の市場規模の拡大など,新しい農業の展開が拡がっています。 さらに,政府提唱の Society5.0 に基づく未来投資戦略2018では,スマート農業の実現や農業データ連携基盤(WAGRI)などによるデータ共有基盤の整備・活用が強く推奨されるなど,新技術の展開と波及にもめざましいものがあります。
 令和2(2020)年3月31日に閣議決定された 「新たな食料・農業・農村基本計画」 では, ① 農業の持続性確保に向けた人材の育成・確保と生産基盤の強化に向けた施策の展開, ② スマート農業の加速化と農業のデジタルトランスフォーメーションの推進, ③ 地域政策の総合化と多面的機能の維持・発揮, ④ 災害や家畜疾病等,気候変動といった農業の持続性を脅かすリスクへの対応強化など,政策の基本的な視点が示されています。 これを受けて,次期の土地改良長期計画の策定作業が現在,進められており,産業政策と地域政策を車の両輪とし,これを下支えする国土強靱化,以上を三本柱として,人口減少下で持続的に発展する農業の振興,多様な主体が住み続けられる農村の振興,農業・農村インフラの持続性・強靱性の強化など,農業農村工学会の果たすべき役割が明確に反映されようとしています。
 一方,国外においても,急速な人口増加や著しい経済発展,さらには将来的な気候変動の影響などによって,新興国・発展途上国では,農業生産基盤や農村生活環境の脆弱性が顕在化しており,解決すべき喫緊の課題となっています。
 以上に加えて,このたびの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響は甚大で,収束の見透しが立ちにくく,様々な面で私たちの社会活動や日常生活に多大な影響を及ぼしています。
 このような現状を鑑みると,農業農村工学会が担当する学術・技術の中心的な対象である農業と農村は,社会や文化も含めて,国の根幹にも関わるような内容と規模で変容せざるを得ない状況にあると言えます。 これまでとは大きく異なる状況下で 「これからの農業と農村のあり方」 を考究し,進むべき方向性を明確に確定し共有した上で,継承すべきものと新たに創出すべきものを整理するとともに,得られた知見や新技術を社会に還元することが,今まさに求められており,農業農村工学の研究者・技術者への期待とその役割は,これまでにも増して大きなものとなっています。 平成13(2001)年に示されたビジョン 「新たな〈水土の知〉の定礎に向けて -生命をはぐくむ農業・農村の創造- 」 を今一度,振り返り,皆で再共有する時と感じます。
 農業農村工学会がそのような期待に応えるために,最優先で取り組まなければならない課題は,人材確保と人材育成です。 農業農村工学会が核となって,大学や研究機関の研究者や,行政機関や民間会社,地域レベルの関係団体などの技術者が連携し,国内外の社会が直面する難題に立ち向かって行くことで,若い人々に農業農村工学が魅力ある分野であることを発信し,同時に,この分野で活躍することに生きがいを感じられるような仕組みを,みんなで考える必要があります。 特に,農業農村工学分野の大学は,大学改革が進められる中で非常に厳しい状況にあり,農学系学部受験者の減少,農学系大学院における博士課程進学者の深刻な減少傾向を打開すると同時に,若手教員・研究者ポストを確保することが求められています。
 そのためにも,今期における学会全体の運営方針として,大学改革等に対応した存在意義の明確化を目標に掲げ, ① 次代を担う人材の確保と育成, ② 行政との連携, ③ ポスト「COVID-19」を踏まえた学会の活性化,以上を推進して参ります。
 特に 「COVID-19」 対応にはスピード感が必要で,修学の継続に支障をきたしている学生等を支援するため,すべての学生会員に対して今年度の年会費免除を決定しました。 大会講演会に学生が参加する場合も参加費等は免除する計画です。 学生会員に新規入会の場合,新刊図書の購入費を大幅に割引することとしています。
 令和2(2020)年度(第69回)大会講演会は 「COVID-19」 の影響で 「Web開催」 と致しました。 当面,今年の大会講演会では,今後のあり方を示す 「大会モデル」 を作り上げ,さらに 「COVID-19」 による停滞感の中で,今年が学会創立100周年に向けた次の一歩を踏み出す年になるように,役員一同努めて参りたいと思います。
 これらの対応も含めて,会員各位のより一層のご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。