学会誌 第87巻第4号 農山漁村地域の再生可能エネルギーの導入における取組み事例と地域貢献(2019年4月発行)

◆小特集の趣旨
 わが国が人口減少社会に突入している中,農山漁村地域の活性化を図るためには,地域の豊かな資源を活用
した新たな価値の創出や農業関連産業の導入などを通じて,地域全体の雇用の確保と所得の向上を図る施策が
求められています。また,わが国は地球温暖化防止のため,総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合
を,2016 年の実績(15.3%)から,2030 年には,22〜24%まで引き上げることを全世界に約束しています。
このような中,農林水産省においては,農山漁村再生可能エネルギー法に基づき,地域が主体となって協議
会を設立し,農山漁村の健全な発展と調和のとれた形での再生可能エネルギー発電の導入を図る取組みを促進
しています。
 2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始され,日本各地で再生可能エネルギーの導入が大き
く進んでいる状況ですが,農山漁村地域においては,バイオマスエネルギーを地産地消して地域に持続的な経
済効果を生んでいる事例がある一方で,風力発電では,地域の景観悪化や低周波発生に対する健康被害の恐れ
による反対運動が存在するなど,制度や地形条件,慣習上の制約など,さまざまな課題が発生しています。
 そこで本小特集では,農山漁村における再生可能エネルギー導入における最新の取組み事例や導入時の課
題,技術開発の現状,経済効果や地域への貢献などについての報文を紹介します。

◆展 望 「農村地域を豊かにする再生可能エネルギー導入を考える」 農研機構農村工学研究部門 塩野隆弘

◆小特集
農業水利施設を活用した小水力発電の導入効果と課題
     農村振興局整備部地域整備課農村資源利活用推進班 猪谷幸司
     農村振興局整備部水資源課保全対策班 北村知周
売電を目的としない小水力発電の導入事例と地域貢献
     高知大学教育研究部農学部門 佐藤周之
     香川高等専門学校建設環境工学科 長谷川雄基
     (株)環境機器 竹村正史
寒冷地の集中型バイオガスプラントで発生する余剰熱の利用
     土木研究所寒地土木研究所 中山博敬・横濱充宏
北海道における再生可能エネルギー導入の取組みと地方創生
     新谷建設(株)  大内幸則
メタン発酵によるエネルギー生産と地域への多面的な効用
     農研機構農村工学研究部門 山岡賢・中村真人
     農研機構本部 折立文子