◆小特集の趣旨
以前より,わが国の中山間地域では,人口減少と高齢化を大きな要因として,集落としての存在が限
界になる地域などが増加しています。このままの状況では,山紫水明と形容され,土地,水や生物など
の多様な地域資源を有する日本の中山間地域,すなわち「美しい日本の農村」は,耕作放棄地や廃屋が
広がる荒廃した地域となってしまいます。一方,2020年のはじめに発生した新型コロナウイルス感染症
による世界的な物流停止はグローバル経済の危うさを顕在化させ,国内地域資源や地域経済の大切さを
改めて思い知らされています。
また,中山間地域は,都市地域の上流域に位置するため,地域を支える重要な農地や林地さらには農
業水利施設等の維持管理が困難になるなどの事例は,下流域に住む都市住民の防災上の観点からも大き
な問題です。このため,中山間地域の活性化や荒廃の防止は,わが国全体および貴重な地域資源の保全・
継承にとって重要度の高い課題です。
農林水産省では農山漁村の活性化施策として,平成19年の「農山漁村活性化法」の施行,平成28年の
農山漁村振興交付金制度の創設など,農山漁村の定住者確保,都市間交流を促進し,農山漁村地域の活
性化,自立および維持発展を図るため,さまざまな取組みを推進しています。本小特集では,農山漁村
活性化法が施行されて一定の年数が経過し,農山漁村振興交付金などを活用したさまざまな事例など,
農山漁村に豊富に存在する地域資源を活用した農山漁村地域の地域活性化に関する報文を紹介します。
◆展 望
「地域資源の活用による中山間地域の地域活性化研究」
農研機構農村工学研究部門地域資源工学研究領域 石田 聡
◆小特集報文
「原木きのこの特産品化による町おこし」
国際農林水産業研究センター 木村健一郎
埼玉県中央部森林組合 原口雅人
「坂元棚田を維持するための生産意欲向上の取組み」
宮崎大学農学部 竹下伸一
酒谷むらおこし(株) 日高茂信
道の駅酒谷 野邊和美
「中山間地域の農地保全に資する要因と集落営農の持続性」
新潟大学農学部農学科流域環境学プログラム 田中三冬
新潟大学自然科学系 坂田寧代
「鳥獣害対策を通じたジビエ等利用の現状と展望」
農研機構中央農業研究センター 平田滋樹
農研機構東北農業研究センター農業放射線研究センター 中村大輔
農研機構東北農業研究センター 渡邊 彰
農研機構中央農業研究センター 竹内正彦
「農村福祉支援と農村企業連携を活用した中山間地域の活性化」
(株)協和コンサルタンツ 左村 公
(一社)ふるさと屋 髙橋幸照
三重県農林水産部 田中 隆
(株)協和コンサルタンツ 諸藤聡子