学会誌 第85巻第5号 多彩な農業農村工学の魅力の発信(2017年5月発行)

◆小特集の趣旨
 「農業農村整備に関する技術開発計画(骨子)」(案)(平成28年10月時点)では,技術開発の推進に向けた6つの取組方
針が打ち出されました。その中の1つ「人材の育成と品質確保」では,「産学官が連携し,交流,研修,国の計画設計基準等
の技術図書の普及,新技術導入等による品質確保等を通じて,時代の要請に即した実践的な技術力を有する人材を育成して
いく。また,地域の課題を的確に捉え,技術開発の進展に対応して地域への的確な技術的サポートができる技術者の育成を
推進する」とあります。こうした人材を育成していくためには,まず人材の確保が前提となります。これには,農業農村工
学分野に進学した学生がこの分野への魅力を感じ,将来一翼を担うことが重要です。
 農業・農村をとりまく社会,経済情勢は,これまでにも増して,変化の速度を速めており,大規模な経営体の出現や農業
の六次産業化など,新しい時代に向けての構造変化も進んでいます。さらには,極端な気象現象や大規模地震が頻発し,放
射能汚染などもあって,農地や水利施設への減災技術などの進展が望まれ,若い人材を求めています。
 そのために,農業農村工学会では今,教育,研究,行政,民間をも含めた関係するすべての機関が協力し,若い人々に「農
業農村工学」が魅力ある分野であることを発信し,同時に,この分野で活躍することに生きがいを感じられる仕組みについ
て,知恵を出し合うことが必要となっています。
 本小特集では,農業農村工学の魅力を学生会員を中心とした若者に発信することを目的として,多彩な技術・研究の最先
端や若者の活躍の場の紹介のほか,ワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方や職場環境などに関する報文を紹介します。

◆展 望 「これからの農業農村工学のために
    東京大学大学院農学生命科学研究科 西村 拓

◆小特集報文
学生から見た農業農村工学の魅力
    東京大学大学院農学生命科学研究科生物・環境工学専攻 辰野宇大
     
農業農村工学の魅力と若手の人的ネットワーク構築
    大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 中桐貴生

フィールドワークは面白い
    農研機構農村工学研究部門 瑞慶村知佳

仕事の経験を私生活に生かし,私生活の経験を仕事に生かす
    土木研究所寒地土木研究所 越山直子

新たな時代に合った魅力ある職場環境とは何か
    沖縄県宮古農林水産振興センター農林水産整備課 親川千寿子

女性技術者から見た農業土木コンサルタントの世界
    (株)チェリーコンサルタント 社家里枝子・越口紗衣・喜多 愛

若手女性技術者が体験した土木工事現場の魅力
    (株)奥村組 小笠真理恵

「農業農村整備×広報」のすすめ
    東北農政局農村振興部設計課 玉手純子

行政の立場から見た農業農村工学について
    農村振興局整備部設計課 佐々木 優