◆小特集の趣旨
「新たな土地改良長期計画」や「農業農村整備に関する技術開発計画」の策定に引き続き5月19日の参議院本会議で「改
正土地改良法」が可決,成立しました。こうした農業農村工学の新展開は,農業農村構造の変化やICTなどの新たな情報技
術の進歩に合わせて関連技術の深化と一層の分野拡大,そして,その担い手である農業農村工学技術者の活動領域を広げて
いくことを社会が求めています。
「農業農村工学」は,「水」と「土」を技術対象の中心に据えて,農業生産性の向上を含む農業や農村の振興のための多種
多方面の技術の応用の総合体としての多様性を有しているだけでなく,工学的技術に加えて管理運用技術,関係者の合意形
成などの社会的調整技術も必要としているところに,学のアイデンティティがあります。また,関連技術の現地への普及や
社会実装の多くは,国および県などの地方公共団体の農業農村整備事業などのプロジェクトをとおして行われます。技術の
新展開のもとでは,水利用や農地利用を媒介にした地域活性化戦略の構築や地方創生に資する地域資源保全活用,ソフト・
ハード技術の最適な組合せ技術などの事業プロセスモデルやビジネスモデルを確立していくことが重要です。
本小特集では,農業農村工学技術(者)の「地域・事業コーディネート力を発揮した新たな農業農村の創生」をテーマに,
技術者の潜在能力を発揮した新たな学術の展開方向を示すことを目的として,①地域の「水」と「土」にこだわる農業農村
工学技術者の地域・事業コーディネート力による地域活性化の取組み事例,②地域個性を踏まえたオーダーメイドの技術実
装例(事業の立案・計画から実施までを俯瞰した事業事例),③多様な技術を統合した農業農村インフラ維持管理のビジネ
スモデルの発案やそのプロセスなど,新たな技術と事業の発展につながる報文を紹介します。
◆展 望 「農村地域における個人化の進展と新たな地域主体のデザイン」
京都大学大学院地球環境学堂 星野 敏
◆小特集報文
「「人」にこだわる地域・事業コーディネートの試み」
京都大学学際融合教育研究推進センター森里海連環学教育ユニット 清水夏樹
「再び,北海道における「組織の連携,地域での展開」」
(一財)北海道農業近代化技術研究センター 野本 健
北海道大学大学院農学研究院 山本忠男
「農業農村整備事業における環境配慮とアメニティの重要性」
農研機構農村工学研究部門農地基盤工学研究領域 大和田辰明
(一社)地域環境資源センター 北澤大佑
「被災地復興に果たす土地改良区の地域調整力の実情と今後の展望」
宮城大学食産業学群 郷古雅春
(株)イマジックデザイン 友松貴志
宮城大学食産業学群 千葉克己・高橋信人
「多気町勢和地域における地域資源の保全・活用を通じた地域活性化の取組み」
立梅用水土地改良区事務局 髙橋幸照・折戸佑基
農研機構農村工学研究部門 福本昌人
「泥炭地特性を考慮した篠津地域の農業基盤整備と整備効果」
北海道開発局札幌開発建設部札幌北農業事務所 門間 修・佐藤禎示
篠津中央土地改良区 坂本克史
「国営和賀中部農業水利事業の実施と事業調整」
農村振興局整備部設計課 井原昭彦
東北農政局和賀中央農業水利事業所 堀江信一
岩手中部土地改良区 高橋重男
東北農政局農村振興部設計課 北條信義
東北農政局和賀中央農業水利事業所 竹内信之輔
「「四日市公害と環境未来館」における福島県外初の復興農学実験講座」
四日市大学環境情報学部 廣住豊一
三重大学大学院生物資源学研究科 坂井 勝
四日市大学総合政策学部 神長 唯
佐賀大学農学部 徳本家康
茨城大学農学部 西脇淳子
弘前大学農学生命科学部 加藤千尋
三重大学大学院生物資源学研究科 渡辺晋生
東京大学大学院農学生命科学研究科 溝口 勝