学会誌 第83巻第11号 水土の知を次の世代と(2015年11月発行)

◆小特集の趣旨
 農業者の減少,高齢化などに伴い,水利施設の維持管理や土地改良区の運営が困難になる状況が見られます。また,農村
地域の集落内でも農業に関わらない世帯が増加し,農地や水利施設が必ずしも身近な存在ではなくなっている場合も多くな
りました。しかし,地域の農地や水利施設は貴重なストックであるとともに,その地域の歴史や風土と深く関わる存在であ
ることから,自らの地域を知る教材でもあります。さらに,近年,異常気象が多発する中で,利水・治水の安全度を高める
ためにも,水土の知の継承は欠かすことができません。
 そこで本小特集では,水土の知およびそれらを支える技術の継承に関する現状や課題,出前授業や体験学習など次世代教
育の実施事例,水利施設の維持管理に若い世代がスムーズに参画できるしくみを工夫されている事例など,水土の知を次の
世代と共有することに関わる報文を広く紹介します。

◆展 望 「地方創生のためにも水土の知を次世代と
    NPO法人あぐりねっと21 加藤 徹

◆小特集報文
子どもの学びを通し農業水利施設の多様な価値を伝える活動
    農村工学研究所 遠藤和子
     
国東半島宇佐地域の連携ため池に見られる「水土の知」と次世代への継承の取組み
    農村工学研究所 友正達美
    大分県農林水産部農林水産企画課 辛島光彦

非農家も参加する営農組合による中山間地域の農地維持
    新潟大学自然科学系 坂田寧代
    (一財)農村開発企画委員会 落合基継
    新潟大学自然科学 吉川夏樹

大学生による農業水利分野の環境教育と社会への発信活動
    東京大学大学院農学生命科学研究科 木村匡臣・飯田俊彰
    三重大学大学院生物資源学研究科 岡島賢治
    国際農林水産業研究センター農村開発領域 山岡和純
    上智大学グローバル教育センター 杉浦未希子

「水土の知」の体験的学習とその意義
    早稲田大学人間科学学術院 西原是良
    早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター 加藤基樹

高大連携事業を通じた農業高校への農業農村工学教育の支援
    帯広畜産大学 宗岡寿美
    帯広農業高等学校 高山裕司
    岩手大学大学院連合農学研究科 山崎由理
    帯広畜産大学 木村賢人・辻  修

デジタル化された古典読解の問題点と現代語訳の試み
    NTC インターナショナル(株) 藤本直也・神田綾香・柴崎真理子