◆小特集の趣旨
2015 年 9 月に開催された国連持続可能な開発サミットにおいて,「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。
SDGs では,先進国と途上国,政府と民間が対等なパートナーとして取り組むべき貧困や環境などの課題に対し,17 の目標
が設定されました。SDGs の達成に向け,海外農業農村開発協力には,貧困削減,食料安全保障,水土資源の持続可能な開
発利用,フードバリューチェーンの構築支援,気候変動対応,災害に対する強靭化といった幅広い分野での貢献が期待され
ています。
これまでのわが国の開発協力は,技術力のみならず,日本人専門家の仕事ぶりを通じた人づくりへの貢献など,質の高い
協力と評価されてきました。一方,近年の中国をはじめとする新興ドナーの台頭,民間の投資や市場志向の開発に対する需
要の高まりなどの国際情勢の急激な変化を受けて,2015 年 2 月にわが国の ODA 政策の基本方針を示す「ODA 大綱」が11
年ぶりに見直され,「開発協力大綱」として閣議決定されました。そして,2016 年 8 月にケニアの首都ナイロビで第 6 回
アフリカ開発会議(TICAD VI)が開催され,わが国のイニシアチブが世界に向けて具体的に示されました。
こうした中で海外農業農村開発協力は,これまでの協力の実績・経験を踏まえつつも,新たな視座で時代の変化を切り開
いていく必要があると考えられます。学会誌第 85 巻第 2 号では,「海外農業農村開発協力のこれまでとこれから」を特集し
ます。これまでの国際協力と ODA を振り返り,SDGs 時代に相応しい協力のあり方を展望します。
◆展 望 「轍なき道を進め」
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター研究戦略室長 土居邦弘
◆小特集報文
「今後の農業農村開発協力の展開と課題」
農村振興局整備部設計課海外土地改良技術室 宮崎雅夫・勝村昌央
「SDGs と今後の農業農村工学」
神戸大学大学院農学研究科 長野宇規
「農業・農村開発の国際協力の展望」
(独)国際協力機構農村開発部 三次啓都
「海外農業農村開発協力の変遷と課題」
NTC インターナショナル(株) 岩本 彰
神戸大学大学院農学研究科 長野宇規
NTC インターナショナル(株) 滝川永一
「東南アジア諸国における農家参加型水管理の現状と技術協力の方向」
(一財)日本水土総合研究所 齋藤晴美
大成建設(株) 南部明弘
農村振興局整備部防災課 渡邊史郎
徳倉建設(株) 林 亨
「ミャンマーにおけるモデル圃場整備の計画・設計」
農村振興局整備部防災課 渡邊史郎
関東農政局土地改良技術事務所 後藤光喜
(株) 三祐コンサルタンツ 中神芳春
「カンボジアにおける流域水資源利用に対する日本の協力状況」
北陸農政局九頭竜川下流農業水利事業所 平岩昌彦
(独)国際協力機構 増尾 学
北陸農政局柏崎周辺農業水利事業所 高橋良次
(独)国際協力機構 横田憲一郎
「地方の技術・知識を国際協力に活用した香川県のため池研修」
元 (独)国際協力機構 金森秀行
香川県庁 谷川満弘
香川県土地改良事業団体連合会 高尾武司
(独)国際協力機構 高橋政俊
「ルワンダ共和国における農業農村開発の課題と展望」
農村振興局整備部地域整備課 田中卓二