◆小特集の趣旨
令和の時代になってわが国にはかつてない少子高齢化・人口減少の波が押し寄せており,農村部は都市部よ
りもその影響が顕著になっています。基幹的農業従事者は直近5 年間で2 割以上減少しており,今後この趨勢
が続けば農地の維持はもとより,農村地域は衰退して,食料供給能力は失われていくものと危惧されます。
一方で,新型コロナウイルス感染症を経験した今日,社会経済のあり様や人々の価値観が大きく変換し,テ
レワークや兼業・副業等の新しいスタイルの働き方や暮らし方が普及してくる中で,農村の持つ価値や魅力が
改めて評価されて田園回帰や二地域居住など大都市から地方へ,都市から農村へと向かう新たな人の流れが生
まれてきています。
こうした相対するような農村地域のこれからの見通しについて,国では令和 2 年 4 月に「新しい農村政策の
在り方に関する検討会」と「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」を設置して,今後も農村が多面的機
能を発揮しながら地域を維持し次の世代に継承していくための方策についての検討が進められ,令和 3 年 6 月
には中間とりまとめが発表されました。その中では,地域資源を活用した所得と雇用機会の確保,農村に人が
住み続けられるための条件整備,人口減少社会における長期的な土地利用のあり方,農的関係人口の拡大・深
化を通じた農村を支える活力の創出などが提言されています。
これらの提言の実現にむけて農業農村整備の果たす役割はますます大きくなるのではないでしょうか。
小特集では農業農村整備を基盤に老若男女が豊かに暮らす持続的低密度社会の形成について考え,未来を展
望する報文を広く紹介します。
◆展 望
「持続的低密度社会の実現のためになすべきこと」
鳥取大学農学部 猪迫耕二
◆小特集報文
「パンデミックは農村に何をもたらしたのか」
明治大学農学部 服部俊宏
内外エンジニアリング(株) 上野裕士
明治大学大学院農学研究科 中村百花
「持続的低密度社会に向けた農村振興を考える」
岩手大学,サウス・オーストラリア大学 木下幸雄
「農村施策を包含する直接支払いへの期待」
農研機構農村工学研究部門 遠藤和子
「コロナ禍に山古志への移住で考えた農業農村整備」
新潟大学自然科学系 坂田寧代
「山間農業地域の次代継承に向けた持続的土地利用」
長野県木曽青峰高等学校 岩﨑 史