ルーラルエンジニアリング (農業農村工学) とは

- Land - 国土を描く

 都会は魅力的です。しかし、都会はそれ自身で存在することができません。 食料が必要ですし、憩う場所も必要です。 背後に、都会を囲む大きな自然の空間が必要なのです。 人間は、この自然にはたらきかけ、自然を改造しながら生きてきました。もちろん、手をつけないままの領域も、人間にとって、また自然自身にとっても必要です。
 ルーラル・エンジニアリングの対象は、この自然界と人間活動が直接的な関わりをもつ広大な地域空間です。 そこを、生産性の高い農業と、快適でしかも自然と調和した生活ができる場所にする必要があるのです。 それは、必要以上に自然を変え、人類の生存を脅やかさないためにも大切なことです。
日本では、この対象地域は、山岳や山林などを除く可住地面積の90%を占め、環境と人間の活動を支える重要な役割を担っています。

- Water - 水を活かす

 わが国は清浄で豊かな水資源に恵まれています。 これを利用してわれわれは水田を拓き、お米を主食にしてきました。 夏には日本中いたるところで水田に水が貯えられ、日本の景色をつくります。
 農業には大量の水が必要です。 日本で年間に利用される水資源の約3分の2は水田や畑を潤すためのもので、夏にはその割合は80%を超えるほどです。 しかし、広大な農地に貯えられた水は、地下にしみこみ、再び湧き出して、下流の農地や都市でまた利用されたり、ゆっくりと地下水をかん養して、その利用を支えるのです。
 しかし、自然は優しいばかりではありません。 時には洪水、時には干ばつで人間を脅かします。また乾燥地域の開発には水が欠かせません。 水を活かすとは、自然とのたたかいでもあるのです。 ダム、堰、用水路などをつくり、維持していく営みは、われわれが生きていく限り不断に続けられます。

- Earth - 地球と生きる

 地球の大きさは変わりません。 なのに、世界の人口はわずかこの40年足らずで2倍、66億人(2007年)になりました。 このまま行けば、21世紀半ばには90億になり、そしてその先は・・100億。 地球は、増えていく人口を養っていかねばなりません。 特に、人口増加の激しい発展途上国では、食料増産を中心とした農村地域の開発が緊急の課題です。
 しかし思慮を欠いた開発は、砂漠化の進行、熱帯雨林の減少など、深刻な環境問題を引き起こす一因にもなります。 地球に優しく効率的な農業が求められているのです。 今や経済大国になったわが国には、この地球的課題の達成に大きな役割を果たすことが求められています。 2000年以上におよぶ伝統と高い技術をもつわが国のルーラル・エンジニアたちは、高まる国際的な期待に、積極的に応えようとしています。

- Food - 豊かにする技術

 ルーラル・エンジニアリングは、効率的な農業を実現するための生産基盤をつくります。 目標は、安全な食料を、安定的に、安く供給することです。 それを、いかに楽な労働で合理的に、環境を保全しながら実現するかを徹底的に追求するのです。
 水不足を解消し、より多くの水を利用できるようにダムを造り、川から用水を引きます。 農業用水も、今は水道のようにパイプラインで運ばれる所が増えています。 洪水から耕地を守り、過剰な水は排水します。 農地を新しく拓き、土壌を改良・保全するのも、ルーラル・エンジニアリングです。
 入り組んだ小さな耕地を、大規模な四角い田畑に整備し、農作業の効率化を実現します。 施設を整えて、農作業の情報化、装置化などを進め、苦しい作業をなくし、天候に影響されにくい農業生産を目指します。
これらの仕事のプランニングとデザイン、施工と菅理を、コンピュータや最新の技術を使って研究し実行するのです。

- Life - 快適にする技術

 私たちの祖先は、2000年来続いてきた米つくりを背景に、豊かな農耕文化を創ってきました。 かつて、人びとは山林や川、道路などを共同で管理し、そこに自然と一体になった生活がありました。 現代は、地方の、緑と水につつまれたライフスタイルの価値を見直し始めています。 しかし、そこは、もっともっと便利でなければなりません。
 緑の空間に安全な生活道路が配置され、魚のすむ水辺と、自由に集い、スポーツする場所がある。 下水道は完備されていて、出てくる有機物は農地に戻されリサイクルされる。 生産・生活情報は、コンピュータ・ネットワークが受け持つ。 時に、都会人には憩いの場を与える。 ルーラル・エンジニアリングは、こんな、人間の手がとどく地域づくりを実現しようと考えています。
農村の、人間生活のルネッサンスです。