第76回京都支部研究発表会は,令和元年11月27日(水),272名の参加者を得て,和歌山市の和歌山県民文化会およびアバローム紀の国にて開催された。開会式では取出伸夫支部長の開会挨拶に続き,来賓の村上章農業農村工学会会長,前田健次近畿農政局農村振興部長,角谷博史和歌山県農林水産部長の3氏より祝辞が述べられた。次に,田中丸支部賞選考委員長より,昨年度の研究発表課題から選出された下記の優秀賞5件(9名),技術奨励賞3件,研究奨励賞3件,および研鑽賞2件の選考経過について報告があり,支部長から賞状と副賞が授与された。
【優秀賞】
パイプライン洗浄工法による実証実験とその効果
(株)国土開発センター 七郎丸一孝
北陸農政局 西北陸土地改良調査管理事務所 小林 博
(株)国土開発センター 辰己綾一
トンネル照明設備のLED化により維持管理費の削減を図った事例
兵庫県洲本土地改良事務所 戸田久雄
農業水利施設を活用した小水力発電の課題
若鈴コンサルタンツ(株) 岩田幸大
カエル類の脱出装置(組立水路II型用)の改良による維持管理労力の低減
愛知県農業総合試験場 坪井 充、鈴木博之
中干し後の灌漑および水管理方法が温室効果ガス発生に及ぼす影響
新潟県農業総合研究所 佐藤太郎、細貝知広
【技術奨励賞】
新川河口排水機場主ポンプにおける犠牲陽極のモニタリング(その2)
北陸農政局新川流域農業水利事業所 田中沙知
法面保護工に対する獣害対策について
岐阜県郡上農林事務所農地整備課 小森千晴
補修工法を実施した落差工における著しい摩耗現象の原因究明に向けた基礎研究 -手取川七ヶ用水富樫用水を事例として-
石川農林総合事務所 藤井三志郎
【研究奨励賞】
地下ダム湖内の溶質輸送に及ぼす難透水性傾斜基盤の影響
神戸大学大学院農学研究科 濱田莉菜子、鈴木麻里子
凍結過程にある黒ボク土の熱交換係数に関する実験・解析
三重大学大学院生物資源学研究科 奥田涼太
蒸発法による砂質土の乾燥領域の不飽和透水係数の推定
三重大学大学院生物資源学研究科 鈴木萌香
【研鑽賞】
「水利権の課題と対策事例」ほか一連の研究
若鈴コンサルタンツ(株) 奥田康博
「飼料用米『もみゆたか』と主食用米『ゆめまつり』の栽培容器試験による用水量比較」ほか一連の研究
愛知県農業総合試験場 佐伯晶子
開会式に引き続き,ネイチャー・フォトグラファーの内山りゅう氏による基調講演(講演題目:田んぼの生き物から見る生物多様性)が行われた。その中では,和歌山県や各地の田んぼ環境に生息する多種多様な生き物の生態やそこに関わる人々の紹介があった。
午後の研究発表会は,アバローム紀の国にて,6会場に分かれて100課題の研究発表が行われた。行政,民間,大学,研究機関から日々の研究や業務にて培われた質の高い最新の成果が発表され,各会場では活発な議論がなされた。研究発表会の終了後には,情報交換会(参加者57名)が開催された。参加者相互の親睦が深められ,次年度の開催県である福井から木戸敏浩農林水産部副部長の閉会挨拶を頂戴した。なお,次年度の開催は令和2年11月11日を予定している。
翌日の11月28日には,現地研修会が実施された。参加者数は47名であり,島ノ瀬ダム(みなべ町),みなべうめ振興館(みなべ町),グリーンツーリズム 都市との農村の交流施設『秋津野ガルテン』(田辺市),名田地区(御坊市),国営総合農地防災事業和歌山平野地区波分山崎排水路(岩出市)を巡る充実した見学行程であった。
また,研究発表会前日の11月27日に「学生と若手技術職員の集い」を行い,52名の農政局・県の若手技術者と学生との座談会を行った。本年度試行したこの「人材確保・育成に関する取り組み」は,今後も継続する予定である。
最後に,本研究発表会および現地研修会の実施に当たり,多大なご協力を頂戴致しました和歌山県農林水産部の皆様に心よりお礼申し上げます。