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1. 趣 旨

 2001年に策定された学会ビジョン『新たな〈水土の知〉の定礎に向けて』では、学の対象を〈水〉と〈土〉と〈人〉が分かちがたく結びついた複合系である「水土」と規定しています。
 地域には固有の水土が育まれています。水土の一端は事業や狭義の技術に、さらには歴史として、文化として顕れます。水土の〈水〉と〈土〉が自然そのものではなく、人工物が組み込まれた基盤として形成されているからであり、それらを維持・運営するための社会集団、慣行や儀礼、年中行事、制度などを伴っているからです。そこには、個人に体得された技能から集団に共有されて定型化したものまで、さまざまな〈知〉が存在しています。これらの総体を広義の文化、すなわち “水土文化” ととらえることを提唱します。
 農村の地域資源の中には従来私たちが「学」の対象としてきたものや、それを核として育ってきたもの、まさに “水土文化” の結晶が多種多様にあります。しかしながら、私たちが意識してそれらの宣揚に努めない限り、存在意義を見失われて埋もれてしまいがちなのが現実です。
 水土の歴史に残る事業を成し遂げた技術思想、伝統的な施設に係る技術の解明は、〈水土の知〉の基礎となるにもかかわらず、これまで十分に行われてきたとはいえません。これらをはじめとして各地において先人が苦労して築き上げてきた “水土文化” を明らかにし、時代背景となった自然との共生や克服の精神とともにそれを継承し、さらには新たな時代に合った形につなげていくことは私たちの使命です。しかし、工学の枠を超えた “水土文化” 総体に対する姿勢や学の体系の中での位置づけも曖昧であり、究明・活用のための方法論は未熟です。現在の水土を形成してきた先人の智慧や技術的伝統は早晩消滅するおそれがあるため、その究明は緊急の課題となっています。
 “水土文化” の研究は、もとより狭い範囲の技術史の研究だけを目指すものではありません。工学としての専門的な研究者とともに、業務の傍らで “水土文化” に興味を持つ人たち、その継承や活用など実践活動に携わる人たちの参加、さらには人文・社会科学、自然科学の各分野との交流が不可欠です。そうした多くの人々に支えられてこそ、“水土文化” の研究が進展するものと期待し、共通の舞台として本部会を設立するものです。

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 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 
 農村工学研究部門 農地基盤情報研究領域 地域防災グループ
 廣瀬 裕一