農業農村工学に係わる技術者の倫理規程

平成14年2月19日制定
平成21年3月12日一部改正

前 文
 農業農村工学に係わる技術は、食糧事情の推移や農村社会の変化に対応しつつ、効率的かつ安定的な食料生産の基盤整備を図るとともに、豊かで快適な農村空間の形成に貢献してきた。一方、地球温暖化や生物多様性の減少など、有限な地球環境に対して人間活動が与える影響についての認識が高まる中、循環型社会の構築など、持続可能な発展の実現が全人類の直面する課題となっている。
 このため、農業農村工学に係わる技術者は、技術専門職としての業務を遂行するに当たり、農業農村工学に係わる技術が人類の持続可能な生存基盤の維持形成に密接に関連することを深く認識するとともに、自らの良心に従う自律ある行動が、技術の発展とその成果の社会への還元に不可欠であることを自覚し、以下に定める項目を尊重しなければならない。農業農村工学会会員は、率先してこれらを遵守しなければならない。

(安全、健康、福祉への貢献)
1. 教養と品位の向上に務め、自らの専門的知識、技術、経験を活かして、人類の安全、健康、福祉の増進に最善を尽くし、社会の持続可能な発展に貢献する。

(環境、多面的機能への配慮)
2. 環境との調和及び農業・農村の有する多面的機能、すなわち国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等に配慮しつつ、先端技術のみならず伝統技術の研究、活用に努め、総合的見地から活動する。

(情報の公開)
3. 関与する業務の意義を十分に理解・評価し、公に正しく説明するとともに、それへの批判にも誠実に対応することを心がける。

(契約の遵守)
4. 技術的業務に関して、雇用者あるいは依頼者の誠実な代理人あるいは受託者として行動する。また、契約上知り得た情報の中に、人間社会や環境に対して重大な影響が予測される事柄が存在する場合、契約者間で適切な措置が講じられるよう努める。

(不正行為の回避)
5. 欺瞞的な行為を犯さず、技術的業務に係る全ての形態の不当な対価を拒絶する。

(公平性の確保)
6. 地域の特性と文化の多様性に配慮するとともに、人種、宗教、性、年令等個人の属性によって差別せず公平に対応し、個人の自由と人格を尊重する。

(技術の研鑚)
7. 自己の専門的能力の向上を図り、学術の研究に励む。また、他者との意見の交換に努めるとともに、互いの業務を適切に評価する。これらのことを通じ、技術の発展、普及、人材の育成、さらには国際交流に努める。

(注) 農業土木学会は、平成19年6月29日から農業農村工学会に名称変更されたことに伴い、制定時の 「農業土木技術者の倫理規程」 は 「農業農村工学に係わる技術者の倫理規程」として一部改正されている。