「水土を拓く ・・知の連環・・」

 農業農村工学会80周年記念出版企画。平成19年6月に 「農業土木学会」 から改称したが、それに先立ち将来ビジョン 「新たな <水土の知> の定礎に向けて」 を示した。 「水土」 は農業生産を営む生存の基盤で、物質循環・水循環という循環の原理を働かせて「手入れ」していくことが必要であり、そのために地域に連綿と継承されてきた有形・無形のすべての知が <水土の知> という言葉にまとめられる。
 本書では、古代国家成立(飛鳥時代)から近代までの歴史的歩みを軸に、各地の農業の展開と国土の開発について、地域固有の水・土・里を 「見極める」 「使い尽くす」 「見定める」 「大事にする」 「見試す」 「見通す」 「仲良くする」 という7つの視点から整理し、これからの農業農村工学のあり方を探る。全国に広がる 「農」 や 「農村」 という日本のかたちを再認識するのに格好の書である。

(公社)農業農村工学会 「水土を拓く」 編集委員会 企画・編集/農文協 発行
B5判 360頁 定価 : 4,286円+税(税込4,628円) 会員特価 : 4,114円(税込)

「水土を拓く」 編集委員会
■ 委員長
  三野 徹 京都大学名誉教授・岡山大学名誉教授・鳥取環境大学教授
□ 委 員
・ 有田 博之  新潟大学農学部教授
・ 長利  洋   農村工学研究所企画管理部長
・ 角道 弘文  香川大学工学部准教授
・ 小林 和行  株式会社葵エンジニアリング技術顧問
・ 佐藤 政良  筑波大学大学院教授
・ 塩沢  昌   東京大学大学院教授
・ 田中 秀明  農村振興局設計課計画調整室長
・ 広瀬  伸   水資源機構水路事業部長
・ 広田 純一  岩手大学農学部教授
・ 渡邉 紹裕  総合地球環境学研究所教授

■ 執筆者
第1部 対談 「水土のまほろば」
・ 佐藤洋一郎  総合地球環境学研究所教授
・ 三野  徹   鳥取環境大学教授

第2部 水土を拓く知 ・・・ 連環を読み解く
・ 有田 博之  新潟大学農学部教授
・ 佐藤 政良  筑波大学大学院教授
・ 塩沢  昌   東京大学大学院教授
・ 広瀬  伸   水資源機構水路事部長
・ 広田 純一  岩手大学農学部教授
・ 渡邉 紹裕  総合地球環境学研究所教授

第3部 時代をこえて ・・・ 地域編
・ 根釧地域 : 梅田 安治    北海道大学名誉教授
・ 安積疏水 : 加藤  徹    宮城大学食産業学部教授
・ 見沼代用水 : 中村 好男  東京農業大学教授
・ 亀 田 郷 : 三沢 眞一    新潟大学農学部教
・ 愛知用水 : 千家 正照    岐阜大学応用生物科学部教授
・ 湖東平野 : 渡邉 紹裕    総合地球環境学研究所教授
・ 讃岐平野 : 角道 弘文    香川大学工学部准教授
・ 佐賀平野 : 黒田 正治    九州大学名誉教授

〜 目次のご紹介 〜

第1部 水土のまほろば
【対談 : 佐藤洋一郎 総合地球環境学研究所教授 × 三野徹 鳥取環境大学教授】
<水土の知>の多様性を稲作文化から考える
Ⅰ.はじめに − 「縄文稲作の発見」
Ⅱ.飛鳥、水土のまほろば
Ⅲ.飛鳥から未来へ
縄文と弥生の「知」の違い/多様性を活かす縄文文化/新たな水土の知に向けて

第2部 水土を拓く知 − 連環を読み解く −
1.見極めること
水 : 生きるための水条件(流域・水への働きかけ・谷地田・代かき・田植えと2毛作)/使える水の量(渇水/洪水/地下水/用水量)/使える水の質/使える水のエネルギー
土 : 生きる拠り所(耕作放棄地・ハンガーマップ)/土地の選定/素材としての土
里 : 住む場所(縄文時代の大規模集落・弥生時代の環濠集落・武蔵野の開拓路村)/
環境の認識(自然暦・原風景)/土地に込められた思い(村の領域と「特別な場所」・特別な意味を担う自然・琉球の風水)

2.使い尽くすこと
水 : 使える量を増やす/使う範囲を広げる/何度も使う
土 : 面積の拡大/潜在的な能力の発現/素材としての土
里 : “資源化”ということ/使い尽くされる“場”/使い尽くす“しかけ”

3.見定めること
水 : 不足/過剰/不均等
土 : 土地生産性/労働生産性
里 : 活力/環境・資源/集落機能(尊徳仕法・町村是・一村一品運動)

4.大事にすること
水 : 施設を働かせる/組織を動かす/環境を大事にする
土 : 面積の確保/生産性の持続
里 : ひと/自然環境/こころ(水にまつわる想い・水神信仰・祭の社会的機能)

5.見試すこと
水 : リスクの管理(用水取水の見試し)/変動への対応(水ブニと線香水・10分の1確率)
土 : 変動への対応(リスク分散的農法・「作り回す」農法の形成・割地制度)
里 : 変動への対応(水辺のリスク管理・災害文化の形成・輪中、災害文化の典型・社会実験)

6.見通すこと
水 : 将来展望/予測技術(浸水想定区域図と洪水ハザードマップ)/技術伝達(関東流と紀州流・上野英三郎)
土 : 食料の確保(農地面積の絶対的減少・砂漠化・温暖化による農産物の生産力変化)/地域の広域的枠組み(条里地割・北海道の植民区画・集落地域整備法による都市基盤の整備)
里 : 環境の見通し(日和と雨乞い・持続性の確保)/拠点の形成(二三五の法と理想の農村像・新田立村の形・士族授産と緊急開拓・八郎潟)/将来への投資“学び”の知恵(在地の知の行方・技術の裾野)

7.仲良くすること
水 : 共同による安定(番水・水路掃除・水利費・時間送水・時間配水)/牽制から秩序へ(用水配分操作・円筒分水・上下流対立と調整)/みんなの水(渇水時水融通/渇水調整/用水転用)
土 : 農地の再編(換地・農地の集団化・ワークショップ・住民との協議によって整備された公共施設)/農地規範(土地基本法・ドイツ農村集落の土地利用計画・村の土地利用計画図)
里 : 助け合い・相互扶助(ユイ(結)・講・道普請・川普請・義倉・社倉・郷倉)/相互牽制・規制
(村八分・五人組・村掟・神ならし・仏ならし)/国民の共有財産としての農村(田んぼの学校・棚田オーナー制度・里山ボランティア・農地・水・環境保全向上対策)

第3部 時代をこえて − 地域編
1.根釧地域 − 原野から酪農の村へ
2.安積疏水 − 都市郡山の礎を築く
3.見沼代用水 −  水がとりなす低地と台地
4.亀田郷(新潟平野) − 芦沼から穀倉地帯へ
5.愛知用水 − 木曽川の水を知多半島に
6.湖東平野 − マザーレイク琵琶湖と歩む
7.讃岐平野 − ため池が拓く平野と未来
8.佐賀平野 − クリーク水田地帯の形成